
田んぼの真ん中、わざわざ訪れたいUOZEN(魚善)
東京へ帰る日に新潟駅からカタコトと普通列車に揺られること小一時間。
降り立ったのは、東三条駅。
目的地まで駅前からタクシーに乗れば10〜15分なのですが、この日も気持ちいい晴天、お散歩日和だったので、運動がてら歩いて行こう!とウォーキングシューズに履き替えました。
K「え、、こんな民家の畑の間で大丈夫なの…?」
夫「Google(マップ)は、そう言ってる」
夫「なんだ、あれは!!」
K「サギ?」
夫「なんだかすげぇ所だな。一面田んぼ。ケーコの子供時代は、こういう中で育ったってこと?」
K「だよ。まさに。田んぼでオタマジャクシ捕まえるとか。学校のグランドより広いから冬は田んぼでクロスカントリー(スキー)、高校なんてまさに田んぼの真ん中にあって、その周りをランニングしてた」
都会っ子な夫には、こんな風に田んぼの間をずんずん歩くのは初めてのようで、30分ほどのウォーキングは楽しく、ランチ前の良いエクササイズになりました。
こうしてやってきたのは、『Restaurant UOZEN』(魚善 うおぜん)。
田んぼの真ん中にある、この一軒家レストランは、なんとミシュラン2つ星のフレンチレストランなのです!
以前からその噂は耳にしていたのですが、今回ようやく伺うことできました。
広がる田園風景を見ながら乾杯☆
アミューズとして運ばれてきたのは、動物の骨に乗せられたイノシシのリエット(パリッと食感のチュイル巻きで)。
まさか恐竜ですか?と思ったその骨は、オーナーシェフの井上和洋さんがハントしたイノシシ。
命をいただくことに敬意を払って食事のスタート。
現在ランチとディナーは同じメニューで、お料理はお客様が揃っての一斉スタート、そのお時間は約3時間でした。(とういわけで今日のブログは画像多め)
食後は東京に帰るだけ。ということで昼間っからワインペアリングでしっかり飲みました。
タラの芽のベニエにツキノワグマのラルド乗せ。
タラの芽は、本来この状態で枝からニョキッと生えているのだそう。
ワイルドに枝を持ってかぶりつくと、味の濃いタラの芽に感激。
またそれ以上にツキノワグマのラルドが甘く、繊細で驚きました。
脂なのに油っこくない!
「新潟ジビエのアメリカンドッグ」は、鹿やイノシシの肉をアメリカンドッグ風に仕立てたもので、上には黒ニンニクの発酵ソース。
た、楽しい!
最初のアミューズ3品のプレゼンテーション及びその美味しさは、やはり家庭ではいただけないものばかりで、続く料理への期待が高まりました。
さて、こちらの井上シェフは、元々は東京・池尻大橋でレストランを開いたそうですが、色々と思うところがあって移転を考えた際に、奥様の実家で新潟三条市にある料理店「魚善」を閉めることになり、ではそこで!という展開になったのだそう。
<佐渡産牡丹海老のブイヤベース仕立て>
その美しさを鑑賞。
ポチポチ模様は、ブイヤベースには欠かせぬルイユ(ニンニクと赤トウガラシをすりつぶして卵黄とオリーブ油と混ぜたソース)。
ジュレ状のブイヤベースは、1枚ぺろ〜んと乗っけるのではなく、繊細なものが3枚重ねられているので、なんとも舌触りが繊細。
見るからにタルタル。
でも何肉?と耳ダンボで説明に耳を傾けると、
それは、マイナス60度で処理した昆布ジメの「鹿肉」タルタルでした。
上には完熟神楽南蛮が乗り、それを下の葉っぱでぐるっと巻いて手でいただく。
タルタルの中にパフパフ感じる食感は、黒米パフ。
カラフルパレットのような一皿は、毛蟹と雪下人参クリームにハーブ色々。
中にはイクラがたっぷり。
井上シェフが自ら渓流釣りで釣り上げたイワナ。
左端にちょこっと添えられたのは、マタタビのピクルス。
K「え…、マタタビって猫が好きなあれ?」
夫「そうだよ。君が猫だったら匂いでクラクラ、ひと口で大興奮、ラリって大変だよ」
K「どれどれ♡ うわっ、ほんのり苦味と強い酸味。ラリっちゃいそうです」
そんな冗談はさておき、こちらも下の蕎麦粉のガレッドで巻いていただく。
旨っ!
葉わさびも良いアクセント。
フレンチなのにこうして手掴みで食べると素材の強さや旨味がよりダイレクトに感じられる気がします。
そんな一品は、強烈な酢酸系だった北海道ワインDom. Chaud(ドメーヌ・ショオ)の「Skin Dive」(スキン・ダイブ)と良く合いました。
夫「Skin diveって名前がイイね、ウケる〜。素潜り!」
K「葡萄を果汁と果皮に分けないで、しばらく果皮を果汁に浸漬させて丸ごと果皮からの成分抽出するスキン・コンタクト製法だね」
食べるのが勿体無い!な新潟県を象った佐渡産バター。
イノシシ肉には、山菜、コゴミ、ウド、タラの芽、ミツバ、セリなどがたっぷり。
イノシシ肉の脂身は、雑味なくサラッとしていて、山菜の苦味と素晴らしく合う!
ソースは黒にんにく。
イノシシ肉のリエットで始まった、この日いただいた一連のイノシシは、全て井上シェフが狩猟して仕留めたもの伺い、仕留めた後も全てご自身で処理をされることを思うと、その情熱、手間暇に感服です。
一緒にサーヴされたのは、熊肉のコンソメスープ。
初めて食したその熊肉のコンソメは、まるでトウモロコシのような甘み、でも後味サラリ。
今思えば玉ねぎの甘さだったのかな。
「お次が魚料理でございます」な説明に、思わず「えっ!」な声を発してしまいました。
K「今のイノシシ肉がメインのお肉じゃないんですか?」
店「ふふふ。ここまでが前菜のお料理となります。本日は肉料理は2品のご用意なので、もし苦しければ量は調整しましょうか?」
夫「僕は大丈夫です」
K「すみません…。私は肉料理はちょっと少なめで」
と、ここでこう答えたことを後悔することになるケーコであった。。
魚料理<沖メバルの石窯焼きとアスパラガスにグリンピースソース>
「実は俺もちょっと苦しくなってきたんだけど…」と夫からもレアな発言が出たものの、透明感があって、まるで筋肉の塊のようなコリコリ食感、弾力抜群の沖メバルの美味しさに目を見張る☆
そしてメインの肉料理一品目は、「イノシシロワイヤル・百合根ピュー添え」。
いただく前にこちらを。
マグロのカラスミ?かと思いきや、それはイノシシレバー。
上に削っていただくと、香りがフワーッと。
その香りを嗅ぎ、がっつり重そうに見えたイノシシロワイヤルを頬張ると、口の中で優しく溶けて、スーッと胃の中に落ちてゆくではないか…!
K「あれ?ちっともヘビーじゃない。ペロリです!」
夫「そうなんだよ。俺もこれ食べたら別腹が開いた!?これまで食べてきたところと違った部分を刺激されたのか、まだまだ食べれる感じになってきたんだけど、どういうこと?」
K「なぞ」
という訳で、苦しさなどなく2品目のお肉を待つことに。
それは、お米を食べて育った肉質が素晴らしいという鴨。
・・・。
流石に二人でこれ一羽は食べきれないと心の中で思ったけれど、そうではなく、この日集まったお客様他4名とのシェアということで、6分の1。
金柑と佐渡みかんのビガラードソース添えで。
デセールは、「タルト・オ・シトロン」。
そのストラクチャーは、アールグレイ紅茶のクランブルの土台に紅茶アイス、紅茶クリーム、フロマージュブランのアイス、それらを包むように焼きめのついたレモンクリーム。
アシェット デセールの醍醐味♡
食後はコーヒーと小菓子。
蓬のわらび餅ホワイトチョコ、プリン、ブルーベリーキャラメル。
こう見えて?夫婦ともに以前に比べると最近はちょっとずつ食が細くなり、以前ほど食べられなくなったことを感じていたので、こうして3時間かけていただくフルコースは大丈夫か?と少し心配し、途中で無理かも…と弱気になったものの、正直なところ最後の肉料理を小さくしてもらったことを後悔。
ワイルドな新潟食材をふんだんに使いながら、その作りは美しく繊細、細心大胆なお料理の数々で、画像だけを追うと見てるだけでお腹いっぱいになるかも?ですが、味とボリュームに緩急があり、コース料理として計算し尽くされ、美味しく綺麗に収まるようになっているのね…な感じでした。

食後の余韻に浸っていると窓の遠くに子供達の姿が見えました。
夫「おっ、小学生の帰る時間だ。君もあんな風に田んぼの中を下校してたんだな〜」
K「まーね」
自然豊かな中で伸び伸びと元気に、心豊かに、子供達の未来が幸せいっぱいでありますように!と、遠い日の自分を重ねながら幸せな気持ちになった「レストラン・ウオゼン」での食事でした。
アクセスを思うとそう楽ではないけれど、これからもわざわざ訪れたいと思える味、サービス、雰囲気の整った素晴らしいレストランでした。
**********
パリにお土産。
パリの友人にプレゼントしてたいと思った切れ味抜群、波模様が美しい新潟・燕三条の包丁メーカー「藤次郎」の肉ナイフ。
**********
*Belle et Bonne Blogは、気ままに更新。
ARCHIVE
MONTHLY